涙/アンテ
しはなにも感じなくなった
きっと
涙で異物を捨てる方法を
思いつかなかっただけなのだろう
そう思っていた
買い物から帰ってきたリエちゃんが
食品を冷蔵庫に片付けていく
庭へ出て
柿の木に水をやっていると
悲鳴が聞こえた
うずくまって震えている
リエちゃんの
そばに受話器が転がっている
何度もむせる
喉を押さえている
ごめん いたずら電話のこと
話してなかった
電話番号変えるから
ソファに座って
それでもまだ泣きつづける
母が男を作って逃げたこと
父に暴力をふるわれたこと
クラス中の子に苛められたこと
手首だけは切らないように
代わりにいっ
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