沈黙の内側、ダイヤグラムは途切れたものばかりで体裁を整えている(5)/ホロウ・シカエルボク
のだと。
腐臭は相変わらずうずくまっていたが、もうその口は動いてはいなかった。顔を上げ、初めのときのように―いや、そのときよりもずっと様々なものが蠢いている視線をこっちに向けていた。やつに対する俺の認識の変化の過程を、やつがどれほど汲み取っているのかは判らなかった。俺は次第に可笑しくなってきた。やつは無力だ。やつはあまりにも無力すぎる―無力ゆえに腐り、臭いを放つのだ。俺の好きだらけの唇から思わず漏れることぐらい、たやすく出来そうなものじゃないか?俺は笑った。というよりも、笑い飛ばした。やつの視線の温度が数度冷えた。それが俺の笑いに拍車を掛けた。俺は身をよじり、大声を上げて腐臭のことを笑った。
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