沈黙の内側、ダイヤグラムは途切れたものばかりで体裁を整えている(5)/ホロウ・シカエルボク
た。
自分がそんな風に笑うことの出来る人間だということを、今日まで俺は知ることが無かった。知るということは、笑うということはつまり、この上なく把握するということなのだ―この俺が誰かを虐げているだなんて。腐臭。俺によって殺された過去の俺の一部。俺によって腐敗した過去の俺。俺を責めるものも俺なら、俺を笑うものも俺なのだ。腐臭は黙って俺を見つめていたが、不意に立ち上がり俺の首に手を掛けた。酷い臭いがした。脳天まで突き上げる臭い。呼吸器官を洗浄したくなるような臭い。やつの目はギラギラと燃えていた。蘇生だ、と俺は思った。「腐臭」が「蘇生」しているのだ。こいつ、笑われて蘇生しやがった!喉元に食い込んだ手はだんだんと力を増してきた。「いいぞ」俺は喘ぎながら思った「もっと絞めろ」もっと絞めろ。窒息するぐらいきつく絞めてみろ、弱虫。俺は残された気管を利用して笑い続けた。
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