月のようでなく蜻蛉/たりぽん(大理 奔)
月のようでもなかった私は
君にうすぼんやりとした影を
もたらしたり
することもなかった
輪郭を
持ちはじめた気持ち
境界を求めてはいけなかった
あいまいなまま
分針が何度、時針を追い越せば
一日が計れるのだろう
それとも膝を抱えていれば
また夜は来るだろうか
儚いものの棲むという
わずかな流れと
小さく震える草いきれ
水面に寂しくうつったものは
さあ、まるで
月のようなものじゃないか
薄ぼんやりした影を
私に与えず
別れの挨拶に軽く手を振る
輪郭は水晶体で奪われ
浅い夢の記憶
蜻蛉の行方
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