アンナ/1486 106
そんな彼は1915年
ドイツで帰らぬ人となった。
知らせを聞いたアンナは体を壊し
自宅のベットで寝たきりの日々が続いた。
父親の献身的な看病も空しく
アンナの体は日増しに衰えていった。
そして父親は筆を手にした。
アンナの生きた証を形に残そうと
忙しい看護の合間を縫って筆を走らせた。
父親はアンナを励まし続け
応えるようにアンナは笑った。
枯葉舞い落ちる晩秋の朝
絵の完成を待たずして
アンナは帰らぬ人となった。
父親の死後その絵は売り飛ばされ
今では誰もその所在を知らない。
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