ミツカドコオロギ(百蟲譜14)/
佐々宝砂
変わった面構えだ。
へんてこりんなその顔は
エンマコオロギを見慣れた目には
ほとんど奇形に見えるくらい。
ミツカドとはいうけれど
確かに三角といえば三角だけど
角張った顔は
ミツカドというよりカドカドだ。
だがこのカドカドも鳴く。
薄の穂が白く輝く季節
歯切れのよい小さな声で。
あの鳴き声にカドはあるか
なあんてことは考えないで
ただ鳴き声を聴いてみな。
(未完詩集『百蟲譜』より)
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