クロアゲハ(百蟲譜17)/
佐々宝砂
初夏の日に映える
あの黒い羽根は
あなたにいつか送るつもりの
今はないしょの手紙
内容はまだ明かせませんが
なにしろ黒いのです
ところどころに紅さしてはいるけど
腹まで真っ黒けなのです
だけどあの黒い鱗粉を
剥がしてしまったら
クロアゲハは死んでしまうから
黒いまま受けとめて下さいね
それはそれなりに
二つ折りの恋文なのです
(未完詩集『百蟲譜』より)
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