アワフキムシ(百蟲譜21)/
佐々宝砂
真夏の草いきれ。
立っているだけでじっとりと汗。
しかしこいつだけは
やけに涼しげだ。
やさしいみどりの草のうえ
冷たい泡で身体を覆って
まるで
クーラーの効いたワンルームの住人。
人間さまより涼しげだなんて
許せないから
指先で泡をぬぐいとる。
それから
涼しい顔してそこを立ち去る。
虫は熱気に乾いてゆくだろう。
(未完詩集『百蟲譜』より)
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