アゲハモドキ(百蟲譜23)/
佐々宝砂
蝶をつかまえたから嬉しくて
タモに入れたまんま
おにいちゃんとこに持ってって
ほら!と叫んだ。
「こいつは蝶じゃないよ、
アゲハモドキってんだ、
アゲハの真似してるけど、
蛾なんだよ。」
蛾だと知ったとたん気持ち悪くなった。
姿形は変わらないのに
タモの中の宝は見る見る色褪せた。
おにいちゃんは
はじめてみる蛾だって喜んだけど
私は母さんが来るまで泣いていた。
(未完詩集「百蟲譜」より)
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