■批評祭参加作品■ アンファンス・フィニ/和泉 輪
、大きな川のやうに、私は人と訣れよう。床に私の足跡が、足跡には微かな塵が・・・・、ああ哀れな私よ。
僕は、さあ僕よ、僕は遠い旅に出ようね。}
※
海の遠くに島が・・・・、雨に椿の花が墜ちた。鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。
何処か独白めいた調子で展開される冒頭部分から強烈に引き込まれる。「雨に椿の花が堕ちた。」で鮮やかな視覚的イメージを誘うと同時に春の到来を予感させ、「鳥籠に春が、春が鳥のゐない鳥籠に。」で言わば「主を失った家」という強烈な不在感を提示しながら、やはりそこにも春がくるのだという一種の諦観。そしてこの「A→B B→C」といった関係性を明示
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(14)