【道化】/穢土
 
つつある。
美味しい飯を食って、甘い異性と抱き合う。
優雅な休日と事足りない暮らし。
誘惑に負けちまう空間に、美など存在しないのだろう。
美にも生活は必要だが、情報と社会が全て便所へ流しちまう。
其処で俺は“空”に疑問を投げかけた。美とは何だと。
したら奴さん、赤い玉を燃やしやがった。
『それは違う。俺が見たいのは美を持つ人間だ』と問うた。
したら奴さん、黙ったまま小便雨を降らせやがった。
濡れた身体が火照り始めた頃合に虹を見た。
そいつは美というものには程遠いが、
試しにホルマリン漬けにされた美を物干し竿で虚空高く干してみた。
が、一滴の滴りもない。枯れ涸れの残り糟を懐に
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