【道化】/穢土
 
の蜷局(とぐろ)巻く大糞だった
ブンブン蠅の飛び交う光景は、時代の空気に相応しく、
せせら笑う片頬に寒さを感じる。語ることに躊躇を伴う空気の中で、
口を開くものは勇者でなく大馬鹿ものと見られる冷めた空気の中で、
あえてそれをしてみても、野次や罵詈雑言が飛び交い、
自論は便座で踏ん張っていても愚者の餌食となり、流されちまう。
総てが面倒で、腕から吊り下げた提灯を持ち続けるのがやっとこさ。

こんな時代に美が存在するのか。美とは何だ。

かつて俺の先祖にも美は存在したし、それが為に生きた時代もあった。
今じゃそれらは書物の中に埋没し、
各々の脳内を漂うだけの記号と化しつつ
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