ヒューム「ベルグソンの芸術論」(2)/藤原 実
したならば、風景は一場の幻灯画として映じ、身辺の物体は悉く一種のオブジェになってしまうのではなかろうか?キュビズム以来うけつがれてきた「物体愛好」の心理の奥には、確かに、この現代的涅槃への願求が隠れている。
何事にせよ、それが真のオブジェであるうちは世間からは顧みられない。手頃なおもちゃになって、初めて人々は手を出す。本当のオブジェには堪えられない。何故って幻灯機械のレンズの焦点が引伸ばされるにつれて、各物体は互いに限界を喪失して、怖ろしきカンディンスキー的融合に傾くにきまっているからである。
(稲垣足穂「オブジェ・モビール」)
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現代詩に大きな影響
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