ヒューム「ベルグソンの芸術論」(2)/藤原 実
 
ないものだけが開発されて、「本来的なもの」は常にわれわれの手から逃れている。

われわれは技術的に物を見るのではなく、物そのものとして物を見る習慣を身につけねばならない。「視るということの本質的可能性を喚び起こすためには只根源的な哲学と偉大な詩の他にはない」(ハイデッカー)

            (稲垣足穂「視る!」)


われわれがいったん意志を断滅したならば、人生はおぼろに淡い只の現象とのみ見えてくる筈だ」ショーペンハウエル随想録中の言葉である。それならば、われわれが意志を断って、静寂派の大立者Guyon夫人のように、「我の今ここにありやなしをすら知らず」の境地にまで到達した
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