小詩集  日は出づ  暗き予兆のまま/杉菜 晃
 
と影


◇白い鳩

夏の夜に
翔る
白い
鳩は



◇夏帽子

牧場の杭に
忘れたままの
夏帽子

牛の注目を集めて


◇あはれ

サワラビ
頭垂れても
摘まれてゆく


◇灯台

灯台は
夏の海に
白い
石の塔


◇夏

炎天の
田舎町は
影さへ
燃えてゐた


◇猫柳

猫柳
赤ん坊を
あやした後
小さい手に
もてあそばれ
あげくは
口の中


◇風車

風車は
季節の移ろひにゆだね
時々刻々
ゆかしい色に染められて
回つてゐる


◇北窓

北窓を開く
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