昔、横堀さんというおじいさんと/芳賀梨花子
 
い。犬の遠吠えに共感する。月明かりも時には頼りになる。時間というものは人を変える。いつも彼の問いに答える為に、太古の海底を晒す断層のように苦しむけれど、そのうち妙に納得してしまう。ライオンの歯の様だと言われているたんぽぽの葉っぱを摘みベーコンのサラダを作る。彼はそういう人だった。彼を思い出す時はいつも焚き火とベーコンのよい匂いがする。爆ぜる火を眺めては何時間も横堀さんの話をした。彼は笑っていた。多分、私も。でも、もう、好日山荘は銀座に、あの場所にない。大手量販店に吸収合併されたんだ。
 
 キャンプの夜に必ずコッヘルを満たしたたんぽぽコーヒーをひさしぶりに飲んでみた。身体にいいんだよと言うけれ
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