似ているもの/吉田ぐんじょう
とがある
吹奏楽部に入っていたのだ
頭が悪かったのか
わたしはずっと
「吹奏」を「水槽」だと思っていた
ブラスバンド部
と言われるのが厭だった
暑苦しい青春の表徴
みたいな言葉に聞こえたから
音を耳に閉じ込めなさい
と先生はよく言った
すうっと真ん中を通るような音が
必ず見つかるから
それを聞いたら
耳に閉じ込めて
指で覚えておきなさい
と
あの頃と同じ形の耳で
わたしは自分の深呼吸を耳に閉じ込める
いとしい人たちの声を耳に閉じ込める
自分の感情を右手で微調整する
誰もいない
音楽準備室でやったように
ひっそりと
すこしだけ眼を閉じて
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