『救いの雨(巣食いの雨)』/しろいぬ
 
でも。ぼくにはなにもありませんから。命だって、これだってぼくのなんかじゃない」

「あー、なんだ。お前、死にたいのか?」

「それは…」

なぜか即答できずに口ごもってしまった。なんでだろう?今言った通り、ぼくにはなにもないはずなのに。

「…はい。できればこのままそっとしておいてもらえませんかね?」

「そうか」

おや、意外。わざわざこんなぼくに話かけてきた位だから、てっきりぼくを止めようとすると思ったのだが。

「それなら、しょうがないな」

うん。分かってくれたみたいだ。ぼくも正直この状態で長話は遠慮したかったところだし、物分りのいい人でよか
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