泣きぼくろ。/もののあはれ
 
ように。


毎晩布団の中で百回祈った。
百回祈れば明日の朝にはみんな仲良くなれることを信じて。

それでも土曜の夜にはまた当たり前の様に喧嘩が始まった。
きっかけはきっと些細な内容だったのだと思うが。
父が怒り母に投げ付けたニンジンが。
押入れの襖に突き刺さったことは今も鮮明に忘れない。
ニンジンの絶望的に綺麗なオレンジ色を決して忘れない。

僕より小さな妹はこんな状況を全く気にすることも無く。
ブラウン管のドリフターズをキャッキャと笑い魅入っていた。
僕は妹の後ろに座り。
僕よりもずっと小さく無防備な。
笑ってはしゃぐ無垢な背中をしっかり強く抱きしめた。
ブラ
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