靴下売りと指人形/吉田ぐんじょう
つまさきが冷えるので
靴下を買おうと思って
鳥の格好をして表へ出た
別に態とではない
暖かそうな上着を着て
マフラーをきちきちに巻いたら
鳥の格好になってしまったのである
ためしに玄関マットの上で羽ばたいてみたが
勿論飛べなかった
着地するとき足をひねった
しょぼくれたような冬の太陽は
しにゆくもののまなざしに似ている
靴下は靴下売りが売りに来る
靴下売りは行商なので
電柱の陰などで
通りかかるのをじっと待っているしかない
来るときもあるし来ないときもあるが
今日は来そうな予感がした
空気が毛羽立っているような感じがしたからだ
電柱の陰に立っていると
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