靴下売りと指人形/吉田ぐんじょう
 

くまの格好をした人が幾人も通った
今冬の流行はくまの格好なのかもしれない
鳥の格好をしたわたしは
見つかって捕食されないように
息を潜めて電柱とブロック塀の隙間に挟まっていた
ごく近くに
何度か温かな息遣いを感じたが
どうにか捕食もされずにやり過ごした
やがて三時のチャイムが鳴ったのでおやつを食べた
その辺に死んでいた虫を食べた

靴下売りは結局来なかった
日没になっても来なかったので
諦めて家へ帰った
門のところで誰かが落としたらしい指人形を
幾つか拾った
指付きだったら厭なので
逆さにして何度か振った
爪は幾枚か滑り落ちてきたが
指は入っていないよう
[次のページ]
戻る   Point(10)