恋人とのわかれ/吉田ぐんじょう
 

どんなに長く電子メールを送信しても
恋人は七文字程度しか
返信してくれないのである
業を煮やしてメールを送信するのを止めると
次の日から
矢文が届くようになった
頬を掠めてすこん
何処にいてもすこん
と傍らに刺さってくるのである
一体
何処から射出しているのだろうか

中身は
相変わらず七文字程度しか書かれていないが
愛されているのだと
慄然とする


恋人が米を炊いた
と言うので見に行ったら
炊飯器の中に
大量のしらすが入って
ほこほこしていた
こらっ
と叱咤すると
首をすくめて
床の上に平たくなってしまった


恋人は何時も
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