恋人とのわかれ/吉田ぐんじょう
も
塩あめを舐めている
そうして硝子じみたそれを
舌で色々な形に細工して吐き出す
服の釦が取れたときなどは
本当に便利だ
二つ穴でも四つ穴でもカフスでも
きちんきちんと作ってくれる
ただ難点は
少しべたべたするところである
▽
恋人が最近
唸るようになった
威嚇するように
ううううと唸る
放っておいたら
或る日の真夜中
みるみるうちに湾曲して
犬のような獣になって
走り去ってしまった
あとには水晶体のように
まるくなった塩あめだけが
残されて
口に含んで
舐めてみたが
存外さみしい味のあめである
そんなにさみしかったなら
言ってくれればよかったものを
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