『逃亡か鹿』/しめじ
よね。外は寒いから二人とも炬燵の中で仲良くしたいよ。みかんに詩集なんてあったらあなたもう死んでもこのポジションを死守したくなるわけでして。そんな体たらくなもんだから、キッチンに干してあった水色の靴下が燃え始める。時計を見ると先ほどから二百十八時間ほど進んでいて、家の中は炬燵がいらないくらい暖かくなっている。それでも出られない。小人がね足を引っ張っているんですよ。などと駆けつけた消防隊員に言い訳をするのだが、まったく聞いてもらえず、大根を引っこ抜くように私は炬燵から引き出され、タンカーで運ばれたのだった。そして今私は太平洋の真ん中にいるのだ。釣りなんてしたことは無かったけれど暇だし、飯くわんとだし、
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