廃船??夜明けのとき デッサン/前田ふむふむ
、蒼い月が産んだひかりのきらめきで、もてなす。
船の舵が溶けて、それを海に葬送された者たちが、
たぐり寄せる。
死するものための波頭は、海の馨しい記憶の、
聴こえざる歌を唄い、
船の輝かしい系譜をなぞりながら、
眠れる空に高々と打ち上げる。
夜ごと海が行う廃船のかなしみの水葬が、
鎮まりゆく喝采の戸を、海の断崖で叩いている。
誰にも知られることなく、ひっそりと。
ときだけが敬礼する。
3
真夏を彩る真鍮の欠片が、閃光を発して、
冬の脅える空に、鈍い金属音を砕く。
果てしなく続けられる、
終りなき、復員のとき。
いつ
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