廃船??夜明けのとき デッサン/前田ふむふむ
った頭を、横たえる。
そこでは、死は大きな口を、
顔の外に開けて、微動もせず、
群れをなして、林立している。
かなしみも、憂いも、劇薬に切断されて。
煌々とした月のひかりに、照らされて、
骨は重なり合い、絡み合い、傷つけあい、潰し合い、
かたちを、冷たい海の溜息に、晒された、
船の墓場が広がっている。
侮辱された残骸の山々。
廃船は、一つずつ衣を脱ぎ捨てて、
剥き出しの骨をさらしている。
脱ぎ捨てられたものは、
夜が沸騰の中心点を選ぶころ、
遥かな広い海原に向かって、過去の美しい姿で、
音を立てずに入水する。
マストが空の階段の上で、はためく。
甲板を、蒼
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