廃船??夜明けのとき デッサン/前田ふむふむ
ように、
紅潮する頬を、弛める。
赤い波が、海のはじまりと、終わりとを、
引き合い、溶かし合い、
あなたの空虚な胸の繊毛を、やさしく絡める。
赤い波が――、
水没のとき。
2
夜がとばりに鍵を掛けて佇んでいる。
湿った空気が硬質な無音を垂らして凍る夜が戯れる。
海鳥も漆黒のベールで液状に溶けて眠りについている。
微かな呼吸が囁く季節の枕元で、
もはや、行くべき場所もなく、帰り来る場所もない、
打ち捨てられた去り逝く栄光が、
沈黙した黒い海で、巨大なからだを崩れながら倒れた。
一つの塊は、冷たく骨になった
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