扉の手前/佐々宝砂
 
いで日本の小説がきらいで
でもSFだけ例外で
でも同級生でSFなんて特に鈴木いづみなんて読んでるやつはいなくて
そういうやつらと話をするために
いま流行ってる歌を聴いたりドラマを見るのもめんどくさくて
あたしはとにかくかったるくってかったるくって死にそうで
恋すらかったるくってしたくなくて
いちばん大切な大切なSFだけ抱きしめてねむった

ねむっているあたしの耳元
DJの叫びとともに扉がひらいたとき
あたしはどうすればよかったろう
あたしは扉をあけて
扉のむこうにゆくほかなかった
でも
そのころあたしはちっとも知らなかったし
気付きもしなかったけれど
なにも捨てた
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