わるい夢/渦巻二三五
 
がくるんと回った。

 額の上で空気が動いて わたしはまぶたの内で覚醒した。眼窩で眼球が回り瞳がまぶたの内側にこすれて止まった。目は閉じたまま 見ると細長い光がゆっくりと幅を増してゆく。扉を開けて彼が入ってくる。
 起きあがろうとして 右ひざに紐をかけ引き上げるところを思い浮かべる。が、充分な太さの紐がイメージできない。結び目がどうなっているかも。脚はのびたままだ。
 彼は音を立てずに近づいてくる。声を出してみる。聞こえない。舌先が歯の裏に触る。口が開いていないのだ。

 まぶたを透かして わたしは彼を見つめている。彼の両腕がゆっくりと持ち上がる。開いた両手をまっすぐに差し出して そば
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