蒼茫のとき?死の風景/前田ふむふむ
 
を貫き、
立ち込める霧が、森の寒さを、悉く埋める。
わたしは、紫色の透明な布で巻かれた、
舞殿の痕跡を、わずかに留める、記憶のひろがりが、
欝蒼とした木々の群のなかで、篝火を焚いて、
顔を扇で覆う巫女の青い姿態を、耳の奥で見つめる。

白い夜が、数度、鈴の煌めきを、走らせる。

ひかる暗闇に包まれた、耽美な織物を、
一瞬、煮えたぎる白昼の狭間で見たように、
秒針は動いたが、寡黙な梟の羽ばたきが、
耳に飛び込んできて、わたしが、失われた夜の、
過去の月下にあることを、知らせてくる。
何枚もの黒い布を被せた夜には、体臭がない。
盲目のみずおとが、流れるだけだ。
嗚呼、生
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