冬の庭/まほし
 
まま腕を引っぱって家に入ろうとするので、
からだをふりはらって庭を飛びだした。


わたしは西へ西へ、走りはじめた。


 (お母さんのかなしそうな顔がよぎる)


わたしの頭は
だれもしゃべっていないときも
つめたい雨みたいな声に
ずんずんなぐられていたから、
ぐしょぬれになっても
氷みたいに動けなくなって、


 (しゅんと枯れそうになった花がよぎる)


ねえ、花は
人になりたいとか鳥になりたいとか
おもったりしないの?
ふまれてもけられても
にげられないのに、
ねえ?


 (わたしの、
 殺されてしまったものたちがよぎる)

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