小詩集  雪の扉/杉菜 晃
 


よけい音は

大仰になる


目と嘴の鋭い

あの鳥は何



◇キリギリス


何昼夜も鳴きつづけて

キリギリスは

今朝鳴きやんだ


終着駅に着いた

列車のやうに

静かに

夜だけが明けていく



◇風花


碧天に

きらめき舞つてゐる

冬の前兆

優しい姿に化身して


かざはな


冷たさ

尋常でなく

人は決意して待つ

苛烈な冬の時代



◇雪の扉


野兎

日がな一日

雪の上にゐる

跳ね

佇み

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