小詩集  雪の扉/杉菜 晃
 

ひときは抜きん出て


そよ風に身をゆだね


手持ち無沙汰に


何もない空を


掃いてゐる



◇蜩


旅先の日暮れ道

忙しなく歩いて行くと

カナカナの鳴く里に出た



どうしてか

この村だけは

明るく日が射してゐるのだ



◇バス停


木枯らしが


身体にきつい


しばらく


バス停に立ち


人群れに紛れて


風をやり過ごす



◇駆け抜ける鳥


落ち葉を鳴らして

駆けていく鳥は何


枯れ葉に身を

隠さうとするから
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