寓話#4/Utakata
一杯に開け放つ。吹いている強い風で部屋の中の言葉は跡形も無く外へと飛ばされてしまうのだが、どの家も同じようなことをやっているものだから、窓を閉めるその瞬間、どこかからやって来た別の言葉が部屋の中に滑り込んできてしまう。どこかの誰かが発した言葉の切れ端が部屋の中に残る。しばらくは黙っているのだが、やがてその切れ端について言及しようと言葉を発し、発せられた言葉は薄い気体となってぼんやりと部屋の中に漂う。
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郷愁にも似たその記憶を何とかして捨て去ってしまおうと、少女は瓶に詰めたそれを海に向かって流す。海流に乗ってそのガラス瓶は大洋まで運ばれていくのだが、途中で瓶の蓋が外れてしまう。記憶の比重は
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