寓話#4/
Utakata
重は海水よりも大きく、それは闇に限りなく近い群青色の果てにまで沈んでいき、そこにはいつしか捨てられた記憶の層が出来上がる。海底で静かな眠りを続ける鯨たちは夢の中にそれらの記憶をゆっくりと取り込み、長い時間の後で海面近くへと浮き上がり潮を吹く。かつての少女であった一匹の鴎がその一瞬の潮を目にし、かつて自分が捨てたはずの記憶が再び見出されたことに気付く。鴎は思う。私はかつて鴎の記憶を引きずっていた一人の人間の少女であったのだと。
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