寓話#4/Utakata
 
煙を吐き出すとおもむろに手の中の煙草を彼の唇に戻す。彼も私に対して全く同じことを行い、それでもいつかは煙草は燃え尽きてしまうのだけれど、すると私たちは各々自分の煙草入れの中から新しい一本を取り出して、お互いの唇の隙間に差し入れる。外では雨が降っていて、その間ずっと私たちはこの無益でしかも自分からは決して止めることのできないこの遊びを続けている。


言葉を発する。発せられた言葉は漫画のフキダシのように雲状の薄い気体となってぼんやりと部屋の真ん中に漂う。しばらくはそれも我慢できるのだが、やがて何も見えないほど部屋のなかが言葉で埋め尽くされてしまい、そうなると仕方なく手探りで窓を探し出して一杯
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