祝、人間/山崎 風雅
 


 滲む星を見て
 歩いた

 冷たい風に吹かれながら
 歩いた

 誰もいない道を
 歩いた

 その頃
 詩なんて書いてなかった
 
 救いは空の向こうにあり
 自分のなかになるなんて思いもしなかった

 左脳には「死」の文字が点滅していた
 
 あの頃
 生きていくことなんてできやしなかった
 ただ、死ねなかっただけだった

 誰も信じてなかった

 俺は震えていた
 恐ろしかった
 
 本当に死ぬしかないと思ったんだ

 誰しもに冬は訪れる
 氷のように固まった心を照らす太陽は
 自分の中にある

 重い扉の向こうには
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