祝、人間/山崎 風雅
 

 また別の自分がいる

 俺は脳神経が痛むほど
 一人で歩いた
 扉を開いた
 
 恐ろしかった
 ものすごく恐ろしかった

 扉の向こうには
 キラキラ輝く世界があった

 楽しいことばかりでもないけれど
 もう、地獄にはいない

 人と人に挟まれて
 人間になった

 嘆くこともあれば
 笑うこともある

 裏切られることもあれば
 信じられることもある

 絶望することもあれば
 希望が見えることもある

 俺は人間だ
 そう、俺は人間だ

 すべり台から降りてくる子供のように
 次から次へと喜びと哀しみが訪れる

 人間だからこれでいい
 がんばってるなんて陳腐な言葉は吐かない
 
 人間だからこれでいい
 泣きたい時には泣かせてもらう

 人間だからこれでいい
 笑うときには思いっきり笑わせてもらう

 

 人間になるだけのことが
 すごく大変なことだったよ



 
 
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