ロシータ/水在らあらあ
 
ている
親猫一匹と
小さいのが五匹
九月の潮の満ち引きが一番激しいときに
庭まで沈んで
まだ手のひらに乗るくらいだった
おまえたちが逃げ遅れて
作業用の船を出して助けた
ずぶぬれで
泣きっぱなしで
手に取ったら
ものすごい熱で
震えて

あんなふうにきっと
俺も泣いていたんだろう
おなかが弱かったおれは
何を食べてもだめで
あなたはいつも俺のおなかをさすりながら
じっと俺の目を見ていた
そのときのあなたの顔
まだ若いあなたの顔を
俺は今でも覚えている
きれいなあなたの顔と
おなかをさする手の暖かさしか覚えていないのは
きっといつだってあなたは

[次のページ]
戻る   Point(52)