ある少女の独白/杉菜 晃
寒い日だった
その日はことに寒かったの
私は病院に重病の母を見舞って
電車を二つ乗り継いで帰ってきたところだった
私の誕生日に当たっていたけれど
とても祝ってもらうどころではなかった
去年もそうだった
母は二年前から入院しているのだから
元気になったら デラックスのケーキでお祝いしようね
と母は二年前には言ってくれたけれど
今はもうそれどころではなかった
あと三箇月持つかどうかと医師に言われていたから
そんな状態だから 自分の誕生日など頭にはなかった
奇跡でも起って 母が快復してくれないかと
そのことばかり祈っていたの
でも電車を降り 改札を出てすぐ
一人
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