「執行」/ゼッケン
 
女も男もおらず、
おれは部屋に戻り、女のかわいそうな顔を思い出して自慰をする
警察に電話をするのは面倒だからしない
おれは女を愛したのだと思う
おれは女のかわいそうな顔を思い出して自慰をするソノトキおれは完璧にやさしいのだったナゼナラおれはやさしさの持ち主だからだった
男たちはみなおれの顔をしていたとおれは言うだろう
女には目も鼻もなくただ黒い涙のすじだけが白い頬を汚している
赤い唇が大きく横にひろがってタスケテと舌先で歯を舐め上げる
薄く広がってきみたちを包み込んだおれのあちこちがぶすぶすと焦げ始め、
火の手が上がり、おれは穴だらけになっていく
世界地図をひろげてみたまえ

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