「執行」/ゼッケン
そこにおれはおれの顔を描く
おれは毎晩、包丁を持って川沿いの道を歩く
ファミリーレストランのビニールの座席に身体を押し付け、夜を耐える
見えないが、夜中でもコンクリートの橋の下を水が流れているのにおれは気づいている
午前3時になるとビニールを貼られた席に座ったおれは
おれの繊細な指先できみたちを選別する
包丁を持って歩くのは気持ちがよく、どこにでも行ける気がした
おれは新聞紙に包んだやさしさを胸に抱いて深夜のファミレスに行く
女たちの制服はたちまち血まみれになる
おれは厨房に入り、世界地図であるおれのあちこちから火の手が上がる
おれは焦げた穴だらけになってきみたちを楽しませている
みなが笑顔でおれを見てタスケテと言う
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