夜を夢想する海の協奏/前田ふむふむ
で汚した、懺悔の祈りが行われている。その厳粛な時が通り過ぎて、魚たちの、永遠に眠らない海が、立ち上がる。
あなたが失った月のうな垂れる夜は――、
ただ波の音さえ、悲しみに包まれるのに、空気が激しく逆立ち、海鳥の息づかいさえ感じられない。それは、冤罪の海鳥の水葬が、海辺の片隅で静かに行われているからだろう。新たに罪を咎められた、顔の無い海鳥たちは、自らの羽を捥取り、首を折り沈黙する。
あなたと走った浜辺を、わたしは、みずのように流れて――、
夜の海は、海に生きるすべてのものが、犯したすべて罪を流し去り、やがて隠してゆく、そして許してゆく。免罪の時を束ねてゆく。
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