夜を夢想する海の協奏/前田ふむふむ
寂しく死を孕んでゆく海は、澱んだ絵具を飲み込んで。
黒く、黒くコールタールの姿で、波打っていく。
浮遊する闇によって、どこまでも水平線のない海がひろがる。
その垂直なひろがりのなかで、わたしは、海の雫になり、
透明な音韻となって、海の幻想に身を染めてゆく。
3 協奏
懐かしい目次が水底を歩く。
あなたが、軟らかい喜悦を浮かべるしぐさを、
永遠にとめようとした夜が、深々と零れる。
世界は、わたしのみずいろの窓を閉じようとした。
降りつづく星座が、仄かに、あなたの涙を照らして――、
蠢いている海底では、魚たちが、海を苛烈な宿命で汚
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