ピラニア/「Y」
けど、気持ち悪かった」
その時僕は、明の顔が苦しげに歪んでいることに気付いた。それで、僕はあわてて言い足した。
「だけど、それも学問の為だと思えば納得できるんだ。明が蝶の標本を作るのにしてもそうだよ」
即座に明が言い返してきた。
「学問のためだけでは無いとしたらどうなんだ」
「どういうこと? 」
「……いや、なんでもない」
苦しげな顔のまま俯いて、曖昧な口調でそう答えた後、明の顔から苛立ちが消えた。そしてその代わりに、打ちひしがれた憔悴のようなものが残った。
「……それにしても、隆はあのピラニアが本当に好きなんだなあ。なんだか羨ましい気もする。ピラニアの寿命って、何年なの?
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