ピラニア/「Y」
毎年世界中で、千を下らない数の昆虫の新種が発見されているんだ。新種を発見するためには、今まで発見された蝶に関するすべての事柄が、頭の中に入っていることが望ましいんだ。そう思わないか」
僕に向かって訊いてきた明に、僕は、よく分からないが、そうなのかもしれない、と言った。明は僕の顔を眺めた。そして、少し恥ずかしそうな顔をしながら言った。
「どうも蝶の話になると興奮して喋りすぎてしまう。勉強をしよう」
明との勉強は僕にとって、予想していた以上に有意義なものだった。夕方、僕は明に礼を言って彼の家をあとにした。
帰り道、僕はふと思いついて、熱帯魚店に立ち寄る事にした。特に用事があったわけではな
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