ピラニア/「Y」
 
はない。ピラニアの餌にする金魚やメダカも足りていたし、金魚の餌も足りていた。ただ何となく、あの店に行きたくなったのだ。金髪の店員は、店の前で水槽を洗っている最中だったが、僕に気付いて声を掛けてくれた。いくつかの言葉を交わした後で店員は、
「そういえば面白いものがあるよ」
 と僕に言った。
 店員は僕を店の奥に案内し、一番端に置いてある水槽の前で立ち止まった。水槽のなかで大型のピラニアが泳いでいた。店員が言った。
「君がこの店にはじめて入ったときに見た、ピラヤだ」
 僕は、売れたはずの魚がそこにいることを不審に思い、店員に訊ねた。店員は、
「これを飼った人が持て余してしまったんだ」
 
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