小詩集【ルナ区の片隅で少年少女は】/千波 一也
がして
笑顔も涙も
なつかしさも
常にかたちを変えて
わたしたちは零ではない
それだけは確かだと思う
ときを往くということは
こんなにも
優しい約束に満ちて
それゆえに
傾くことの反動は
裏切らない
けっして
機関を裏切らない
九、機械技師
よごれはきらいです
油のにおいの
染みついたシャツには
笑顔があって
すすまみれの顔は
両腕を
あたたかく広げて
傷のある腕にも
だれかのための名前があって
余程のことがないかぎり
よごれなど見つかりません
そのまま
絶えればいいと思います
よごれはきらいです
不器用
[次のページ]
[グループ]
戻る 編 削 Point(18)