小詩集【ルナ区の片隅で少年少女は】/千波 一也
 
がして
笑顔も涙も
なつかしさも
常にかたちを変えて
わたしたちは零ではない
それだけは確かだと思う

ときを往くということは
こんなにも
優しい約束に満ちて
それゆえに
傾くことの反動は
裏切らない

けっして
機関を裏切らない



九、機械技師

よごれはきらいです

油のにおいの
染みついたシャツには
笑顔があって
すすまみれの顔は
両腕を
あたたかく広げて
傷のある腕にも
だれかのための名前があって

余程のことがないかぎり
よごれなど見つかりません
そのまま
絶えればいいと思います
よごれはきらいです

不器用
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