小詩集【ルナ区の片隅で少年少女は】/千波 一也
 
では
異なりを
はらみながら
火山灰は降り積もる

今宵も月は
寒々しくも暖かく
ひとみのなかで
まぼろし
となり



八、天秤列車

傾くことの反動に
ひらくための
ちからは
生まれ

それは
必ずしも
あしたには
繋がらないけれど
むかしへと遡ることも
あるけれど

ちからのかぎりに
望みをもって
ためらって
重さの類は問うたりせずに
傾くためのこころを
ひらくためのちからを
日々に
掴め

詳細な
はじまりを知らず
おわりもまた知らず
ただ
わたしたちは
零には触れられない
触れてはならない
そんな気がし
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