赤い川/はらだまさる
 
の外に立つ男。
窓の内に暗闇と遊ぶ女。

雨が橙の屋根を打つ音と、
川が岩とぶつかる音だけが聴こえるような気がする。
沈黙する二人とその間を
侵食するように拡がり続ける暗闇。

『・・・・・・・・・・・・』
男が意を決したようにその沈黙を破る。
私達の場所からはその声を聴き取ることが出来ない。
女がその声に答えたかどうかすらわからない。

雨が勢いを増して屋根と男を打ちつける。
暫くすると蜥蜴の張り付いた窓が開き
瞑想を解いた黒い髪の女が一糸纏わぬ姿で立っている。
頭上の空と沈黙がさっきとは違う色をしている。

女が窓から身を乗り出して外に這い出してくる。

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